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zoom RSS 【書評】ラグビー「観戦力」が高まる 〜九割の関係者が勘違いしているラグビーの伝え方〜

<<   作成日時 : 2014/05/15 20:49   >>

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ラグビー「観戦力」が高まる
東邦出版
斉藤健仁

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 同じ出版社の「サッカー観戦力が高まる」のラグビー版。もっとも、サッカーの方は読む気はありません。サッカーは年間20試合程度は現地観戦していますし、そこで蓄えた感覚をただの評論家にご添削いただく謂われも無い。そもそも評論家と戦術論を戦わせようと意識高く試合を見ているかというとそうでもなく、スタジアムグルメを楽しんだり、ボールパーソンの手際が悪いと試合よりもそちらの方に指示を送ったり、まるで好き勝手やっています。
 ラグビーに関しても基本は同じ。花園のスタンドから生駒山脈を借景にしつつ高音おばさん達の声を楽しんだり、秩父宮で神宮球場のスコアボードを眺めたり、なんでも面白がって見ていれば十分。とはいえ副題の「9割の人があやふやだった」の統計上制度はともかく、私がオーバーザトップやオフサイドなどの知識があやふやなのは事実。ここは専門家に教えを請うときだと、たまっていたJCBのポイントで購入しました。

 そして読み終えたあと、Jsportsのスーパーラグビーを見てみたら。たしかに「観戦力」が高まっていることを実感しました。ラグビーの大前提として「立ってプレイすること」と提示してくれたおかげで、よく分かってなかったオーバーザトップの理由が「立つことを放棄して倒れに行くから」だとわかりました。そして見えていなかったラックのオフサイドラインも見える。オフサイドラインは組み合っている選手達の一番後ろにあって、攻守ともに立ち入れない領域ができるのです。押し込まれた状態でオフサイドアドバンテージが頻発するのが不思議でしたが、守備が慌てて防ぎに行ったら、勢いそうなるわけです。
 さて、プロローグで記されているように、この書は2019年ラグビーW杯日本開催を強く意識した本。「観戦初心者はもちろんのこと、毎年のように観戦してきたラグビーファンの人たちにも」と、門戸を大きく開いています。とはいえ「観戦初心者」に優しい内容かというと疑問。トップリーグのトライ記録などからラグビーの見方を解説していますが、そもそも初心者がトップリーグの選手を名前だけで把握できるか。ひょっとしたら「トップリーグ」というリーグの存在自体を知らないかもしれません。それを欄外の注釈だけで済ましてしまうのはいささか乱暴といえます。残念ながら現在、ラグビーの試合を地上波テレビで見る機会はほとんどなく、中継があったとしてもその視聴率は低い。本当に初心者を対象にしたいのなら、はじめに「ラグビーの試合を見に行こう」というような章を設ける必要があっただろうと思います。
 もっとも初心者を観戦に誘うのは、著者一人だけの役目ではなく個々のラグビーファンの役目。必要以上に蘊蓄をたれると嫌がられるでしょうが、同行者に「あれって何が起こったの?」と尋ねられたときに答えられないようでは困ります。その意味で本書には「常連を鍛えて初心者への伝道者に育てる」という効果が十分にあり、ラグビーファンを増やしたいと考えている人にはお勧めです。

 しかしながら、ラグビーの競技経験がない素人ファンの私から、ラグビーの魅力を伝えたいと思っている経験者へ、ひとつ忠告したいことがあります。競技未経験者とくに非体育会系スポーツファンに向かって、絶対に使うべきではない言葉があります。

「ラグビーは紳士のスポーツ」

 残念ながらこの表現は、先ほど賞賛した「大前提」の部分で著者も使ってしまっています。「紳士がするフットボールなので、ボールが一番先頭でなければならない」のように。しかしそれでは、前に手でパスしてもいいゲーリックフットボールを再興したアイルランド独立派は、紳士からかけ離れたならず者連中だったのですか?
 もちろん、現在アジア代表権をかけて転戦をしているラグビー日本代表の選手たちは人格がしっかりしている印象があります。しかし私が学生時代にラグビー部の顧問をしていた体育教師は、威圧的で言葉遣いも乱暴だったので、心底嫌っていました。個々人が抱えている印象はともかく正解は「どんなスポーツの選手でも、いい奴がいれば悪い奴もいる」なのでしょうけれども、ラグビー選手については特に、その「紳士のスポーツ」という看板を免罪符にして、横柄にふるまっている印象があるのです。
 実のところ、ラグビーの国際統括組織であるIRBが普及方針として公開している"STRATEGIC PLAN"(英語)で文章内検索をしても、"gentle"という単語は見つかりません。女子への普及にも力を入れているのですから、入れないほうが当然といえば当然。"ノーサイドの精神"と同じように、"紳士のスポーツ"と言っているのは日本だけです。もしも日本ラグビー協会が、本当にファンの支持を得て2019年のW杯を成功させたいと思っているならば、まずは指導者層やメディア関係者らに「紳士のスポーツ」という表現を差し控えるよう通達すべきです。もっとも「変態という名の紳士だよ!」という意味で使っているのなら、お好きにやってください。

 そしてもう一つ。文章の中に「サッカーのように〜」「サッカーと違って〜」といった表現が多いことが気になりました。もちろんサッカーとラグビーは同じ源流を持つのですから引き合いに出すのは当然ですが、やはり「読者はサッカーを知っていて当たり前」という前提に無意識に寄りかかっています。ただこれは著者への苦言というより、JFA日本サッカー協会への警鐘。確かにJFAの普及努力により、サッカーは日本において一般常識化しつつありますが、誰でも知っているがために誰も説明しない状態が続くと、世代の変化により一挙に忘れられてしまう可能性があります。「初心忘るべからず」です。自戒も含めて。

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