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zoom RSS なぜ巨人ファンは「アランチョ・ネロ!」と叫ばなければならなかったのか

<<   作成日時 : 2014/05/20 01:34   >>

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 土曜日、夕食時に親がつけていたテレビがNHK総合で、おそらく父の目的だったろうニュースが終わり、東京ドームの巨人VS広島の中継になったあと。5回終了時の幕間、解説者と実況が経過を振り返っているその裏で、球場内の音声が聞こえてきました。

  スタジアムDJ「アランチョー」
  観客「ネロ!」


  (場内の動画がYouTube上にあります)

 そのあと、ドーム内に観客によって形作られた人文字を、NHKのアナウンサーが説明していました。今年は巨人軍の前身である「大日本東京野球倶楽部」が結成された昭和九(1934)年から80年を記念して、外野スタンドには「祝G80」、内野には「GIANTS PRIDE」「1934 2014」という文字が描かれていると。
 実のところ、この「アランチョ・ネロ」のことは、今年2月時点から知ってはいました。
スタンドにGカラーのアートを再び!〜アランチョ・ネロ企画
「イタリア語で「アランチョ」はオレンジ、「ネロ」はブラックを意味します。」

 このどことなく循環的な修辞。だったらまんま英語でいいでしょうに、ということで、一部の2ch掲示板では「本田圭佑が移籍したACミランが『ロッソ・ネロ(赤・黒)』と呼ばれているのを意識したのでは」という仮説が立てられていましたが、どうやら昨年に行われたイベントでも「アランチョ・ネロ」と呼ばれていたという情報から否定されました。そして当日情報としてこの日が「アディダスDay」であり、入場整理員がサッカー日本代表ユニフォームを着ていたこと、等身大ザッケローニ監督像が設置されていたこと、さらにサッカー日本代表前監督・岡田武史氏が始球式をしたことがNHK中継においても放送されたことで、だいたいの商業的意義がわかってきました。サッカー日本代表と巨人軍のユニフォームを供給するアディダスが、ちょうど先日5月12日にサッカーブラジルW杯メンバーを発表するのに合わせて仕掛けたイベントが「偶然に」NHKの中継スケジュールの中に入ってしまったわけです。

 そこまで把握して、なお問わないといけないことがあります。

 「なぜ、イタリア語なのか」

 どうやら情報によれば、スタジアムDJが事前練習するにあたって「なぜイタリア語なのか、それは私にもわかりません」と言ったとのこと。いや、説明してくださいよ、そこは。たとえば
 昭和九年に結成された「大日本東京野球倶楽部」は、その翌年に米国遠征し、フランク・オドールが率いるサンフランシスコ・シールズと対戦しました。飛行機による移動手段がなかった当時は、MLBの全チームは東部に本拠を持ち、西海岸地域はその下、選手供給元になっていました。そのなかでシールズは、後にヤンキースのスターでありマリリン・モンローの結婚相手としても知られるようになるジョー・ディマジオが所属していました。彼は若き沢村栄治と対戦し、その癖を見破ったともいわれています。イタリア系移民であった彼に敬意を表して、アランチョ・ネロと叫びましょう。

 たとえ牽強附会であっても、これくらいの物語は公式として用意しておくべきです。あるいはアディダスがドイツの企業であることから単純に「日独伊三国同盟の再結成です!」でもかまわない。イタリアがIBAFランキング11位の強豪国であることの認知されていない以上、「わからない」じゃあサッカーの真似をしたように思えます。巨人軍がイタリア語を使った根拠を、他のスポーツと関係なく、野球史および日本史だけで、説明しきれなければならなかったのです。そもそも「コレオグラフィ」なる応援手法をJリーグサポーターらが容易に受け入れられたのは、高校野球PL学園の人文字応援という下地があったからのはずです。

 キャプテン翼あるいはJリーグブームから始まった日本サッカーの発展に、野球界が学ぶべきことはたくさんあるでしょう。スポーツビジネス論が盛んになり始めたのも、プロ野球が比較しうるJリーグというプロ組織ができたからこそ。とくに川崎フロンターレの天野春果氏は、富士通の運動部に過ぎなかったチームを、一試合平均で16000人を集める地元の人気クラブに育てたことで、スポーツビジネス界では有名な人物です。
 ちなみに、今回の巨人軍のアランチョ・ネロ企画も、その天野氏が関与していた可能性があります。発案とか実行といった部分はないとしても、巨人軍広報が天野氏に「どうしたらいいっすかねー」と話を聞きに行くことはあり得る話です。川崎を棄てて東京を名乗った読売ヴェルディを恨んでいるのは私も含めたサポーターだけで、マルクスやフッキの例などから、裏ではかなり仲が良かったことは間違いなく、天野氏にとっても読売グループとのつながりを持ち続けることに利があります。直接聞きに行かなかったとしても、スポーツビジネスの成功例という観点で、巨人軍広報に少なからぬ影響をあたえていたことでしょう。
 しかしながら巨人軍には、天野氏の現在の仕事場では絶対に持っていない、スポーツビジネスにおいて非常に強力な武器があります。「80年」という歴史そのものです。天野氏がFC東京と組み、ノリのいい両チームサポーターと無理やりにでも創造した「多摩川クラシコ」。その逆立ちしてようやく出てきた「伝統」を、巨人軍はすでに「伝統の一戦」として阪神との間に持っているのです。戦争を越えてきたのも凄まじいことです。それをわざわざ棄てて、サッカーの真似をしたように見られるイベントを立ち上げたことの、なんと手際の悪さか。
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 もちろん伝統を意識しているイベントもあります。LEGENDS DAYがそうです。私は川上哲治デーの4月30日に東京ドームに行って、打撃の神様ピンバッヂをもらってきましたが、関連づけの方法があまり良くない。4月27日の戦後プロ野球再開の日を30日にずらしているのは、単に平日の集客を上げたいためですが、その昭和21年4月27日と川上哲治が関連付かない。川上哲治は戦後しばらく故郷の熊本にすっこんでいて、戦後プロ野球再開の日には、チームに参加していなかったはずです。同じことが7月4日の水原茂デーにも言えます。昭和11年7月3日の巨人軍公式戦初勝利、この時期に水原茂は、総監督の市岡忠男との確執から、一時的に退団していたのです。

 私は昨年、とある媒体で日本野球史を物語るために、100冊以上の野球関連の本を読みました。佐山和夫氏の著作群はもちろん、明治44年に東京朝日新聞が起こした「野球とその害毒」とそれに対抗する読売新聞の「野球問題大演説会」を、図書館のデータベースから、周辺記事ごと直接読んだのです。東京ドームの一塁側には、野球殿堂博物館があります。そこの図書室に行くと、懸命に調べ物をしている人たちが数人います。ウソが悪いとは言いません。少なくともそのウソは、野球殿堂博物館に通うような人すら騙せる巧妙なものか、彼らが冗談として笑いすごせるようなものでなければいけないのです。
 スポーツビジネスの研究は大いに結構です。しかし巨人軍のスタッフは、その前に自分たちの所属している組織の歴史を知ってください。大和球士の「真説・日本野球史」全八巻は必読書です。「鈴木龍二回顧録」も読みましょう。正力松太郎について書かれた佐野眞一「巨怪伝」がもしも社内規定的に読めないのなら、代わりに御手洗辰雄の「伝記 正力松太郎」がお勧めです。
 もちろん中には、日本野球機構がRAA(Recreation & Amusement Association: 特殊慰安施設協会・進駐軍のために政府が用意した売春管理組織)と同居していた、というような不都合な真実に出会うかもしれません。江川事件も生きている人がいるので面倒です。しかしそれこそが80年の歴史の重みであり、今自分たちが立っている場所を構成しているのです。それを知った上で、野球史家の考証に耐えうる、物語を作らなければならないのです。
 さらに在野の考証者を増やす努力も必要です。長嶋茂雄の光がまぶしすぎて、子供時代からまともに浴びてきた団塊世代は主観が混じりすぎる。当たり前のことが当たり前すぎて語られず、世代がそのまま煙になって消えるのはもったいなさ過ぎます。ベースボールマガジン社も「真説・日本野球史」と「鈴木龍二回顧録」を再刊すべきです。掲示板やTwitterでやいのやいのと騒ぐことが、今よりもずっと面白くなりますから。
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